セミナー内容


SAS入門コース

SAS入門 (SAS Institute Japan (株))
このコースでは、SASの概要やインターフェイスについて説明した後、データの入出力や加工方法についてのSASプログラミングの基礎を実習形式で行います。コースの目的は、2日目の「因子分析コース」において実習を行うための基礎知識の習得となります。SAS初心者の方で、2日目の「因子分析コース」を受講される方は、ぜひ、ご参加ください。

なお、参加費とは別に、本コースのためのテキスト代金をいただきます。


基礎統計コース

基礎統計の統合的理解 (南風原 朝和,東京大学)
今回の「基礎統計」は,記述統計,推定・検定から,重回帰分析,種々の分散分析までを範囲としています。「統合的理解」という言葉は,いろいろな統計的指標や分析法の間の相互関連,および方法間に共通する基本原理を軸にした理解という意味で使っています。地に足の着いた統計解析を実践するための基礎固めに役立てばと思います。具体的な内容としては,「相関と共変と因果」「推定と検定の関係」「確率モデルの適用に関する問題」「ベクトル表現」「自由度の意味」「偏回帰係数の解釈」「実験デザインの比較」などを重点的に取り上げる予定です。(拙著『心理統計学の基礎−統合的理解のために』(有斐閣アルマ,2200円+税)をテキストとして使用しますので,ご持参ください。

因子分析コース

SASによる因子分析入門 (中村 知靖,九州大学)
因子分析は質問紙法による心理テスト開発時に今もなおよく利用されており,構成概念を測定するための有力なツールであるといえます.本コースでは代表的な統計ソフトウェアであるSASを利用した実習を取り入れ,因子分析の理論と応用について解説を行う予定です.理論については応用場面で必要なものに焦点をあて,可能な限り数式を用いない解説を行います.コースで取り扱う内容としては,「因子分析とは」「データ」「因子分析モデル」「因子の抽出」「因子数の決定」「直交回転」「斜交回転」「分析結果の見方と解釈」「因子得点」「応用上の注意」「確認的因子分析」などを予定しています.実習では実際に得られた心理テストのデータを分析してもらう予定です.また統計ソフトウェアはSASを利用しますが,SPSSに関しても解説を加える予定にしています.(松尾・中村 (著)『誰も教えてくれなかった因子分析―数式が絶対に出てこない因子分析入門』(北大路書房,¥2,625 (税込)をテキストとして使用しますので,ご持参ください.

このコースは,実習形式のため,SASの基本操作,DATAステップに関する知識を持っていることが前提となります.SAS初心者の方は,初日の「SAS入門コース」の受講をお薦めいたします.


ベイジアンネットワークコース

ベイズの基礎と考え方 (繁桝 算男,東京大学)
ベイジアンネットワークモデルの基礎 (植野 真臣,長岡技術科学大学)
ベイジアンネットワークのアルゴリズム (本村 陽一,産業技術総合研究所)
本セミナーは、近年、関心が高まっているベイジアンネットワークに関する入門用セミナーであると同時に質の高さをも目標とする。ベイジアンネットワークは、実用的にあらゆる種類の人工知能的課題に応用することが可能な強力な方法である。同時に、これまでにいろいろな目的のために多様に工夫された人工知能の技法と異なり、確固とした一般的な基盤に立っている。すなわち、その基盤は、確率、グラフ理論、ベイズ的アプローチである。このような基礎を学習するために必要最小限の数学的な説明をし、その発展としてのモデル作り、解析の方法を丁寧に解説する。さらに、実際の応用例を加える。

共分散構造分析コース

共分散構造分析の数理 (狩野 裕,大阪大学)
共分散構造分析は構造方程式モデリングとも呼ばれ,調査(観察)データ分析の定番である.最近では,共分散構造分析に関する講義やセミナーがしばしば開催されているが,その多くは,入門レベルかいわゆるHow-Toものである.本コースでは,共分散構造分析を支える数理的基礎を中心に講述するが,共分散構造分析を適用するに当たっての基本的な内容にも触れる.

数理的基礎を十分に理解するには,微積分,行列,確率論などの数学的素養が要求される.しかし,そのような事前知識がなくても,その雰囲気は味わってもらえると思う.数理的内容を理解するに当たって,一つでも二つでも参加者の疑問が解決すればと願っている.

第一部 基礎編
1. 次元縮小と誤差分離
2. 尺度とSEM
3. 離散変数のモデル
   3.1 離散従属観測変数
   3.2 離散独立観測変数
   3.3 離散潜在変数

第二部 数理編
1. 共分散構造
2. 適合度指標
3. 共分散構造分析における統計的推測

社会調査コース

世論・選挙調査 (鈴木 督久,日経リサーチ)
演題を「世論・選挙調査」とした理由は,社会調査のうちで私が実際に関与している仕事が世論調査と選挙予測調査なので,そこに関する事例が多いためです.その中でも特に1980年代以降の最近20年間のマスコミ世論調査つまり電話調査と,1996年以降の衆参両院でそれぞれ3回実施された選挙予測を中心に扱います.調査データ解析よりも調査データ収集に力点を置きますが,選挙調査については予測法も取り上げます.最近の話題だけではなく,可能な限り世論調査・選挙予測の歴史も振り返って現状を整理してみたいと思っています.

特別な前提知識は要求しない入門的内容ですが,RDDではサンプリング方法に言及するので標本抽出の基礎知識があると分かりやすく,選挙予測では回帰分析の入門的知識があればより聞きやすいでしょう.テキストは使いませんが,林編『社会調査ハンドブック』(朝倉書店)には多くの話題が盛り込まれていて参考になると思います.

Web調査 (吉村 宰,大学入試センター)
Web調査の現状をGroovesによる調査の誤差の分類‐カバレッジ誤差、標本誤差、無回答誤差、測定誤差‐とその対処の観点から整理する。日本におけるWeb調査を巡る議論では、特に、調査の手続きに含まれる標本抽出と実査の各段階を明確に分離して議論する必要がある。標本抽出段階に関して言えば、現行の大部分のWeb調査では計画的・科学的な標本抽出が行われない。Webを利用した調査を行う際の標本抽出・構成の方法を工夫・確立し、カバレッジ誤差、標本誤差を評価・管理できるようなものとすることが課題である。

実査の方法は、モード(面接/電話/郵便/インターネット)、インタービューアの有無、コンピュータ利用の有無の3つの観点から分類でき、これによるとWeb調査は「インターネットを利用したコンピュータ支援による自記式調査」として位置づけられる。これは新しい実施方法であり、その調査法としての特性や性質は研究の途上にある。

欧米では、測定誤差の管理とその対応の観点から、調査票デザイン等に関する研究が多く行われ知見の蓄積もある。選択肢の配置、回答入力の方式、選択肢の長さ、ボタンの配置、色の使い方、テキストの配置など調査票のデザインを構成する様々な要素の違いが、それぞれに、回答に影響を与えることが知られている。しかし、日本ではこのような、測定誤差の観点からの実証的な研究はほとんどなく、Webを利用した調査に関心がある場合、特に測定誤差の実証的研究から始めなければならないのが現状である。

なお、本セミナーは2003年行動計量学会大会時のチュートリアルセミナーとほぼ同じ内容です。